日本で唯一運行していた立山黒部アルペンルートの関電トンネルと立山トンネルのトロリーバスのうち、関電トンネルのトロリーバスが2019年4月から、電気バスに変わりました。
1932年(昭和7年)に都市交通機関として京都で運行して以来、一時期はいくつかの大都市にトロリーバスが開業しました。
しかし、ほとんどが廃止され、立山黒部アルペンルートだけが運行していたものです。
その貴重で歴史あるトロリーバスと電気バスとの違い、なぜ廃止になったかの理由を解説します。
トロリーバスと電気バスの違い
トロリーバスとは、道路の上空に張られた電線に流れる電気を動力として走るバスです。
電車のようにレールは必要なく、一般のバスのように排気ガスが出ません。
ただし架線の無い道路の走行はできない、架線から外れる、架線が分岐や交差する場所でトラブルが起きやすいという欠点があります。
電気バスとは、電気のみを動力として走るバスの中で、トロリーバス以外のものを言います。
排気ガスや有害物質をほとんど出さず、架線を張る必要がなく、一般的な道路を走行することができます。
同じ電気を動力としていますが、トロリーバスと電気バスの主な違いは、次の通りです。
トロリーバス
電気を送る架線が必要。架線維持費がかかる。
架線を共用するので、前のバスを追い越せない。
電気で走行するので燃料補給が不要。
電気バス
電気を送る架線は必要ない。
架線維持費がかからない。
前のバスを追い越すことができる。
バッテリーに充電する必要がある。
黒部ダムのトロリーバスが廃止になった理由
元々黒部ダムは中部山岳国立公園内にあるので、環境にやさしく、トンネル内では音が静かで排気ガスを出さないトロリーバスが運行していました。
しかし運行している車両15台は、平成5年(1993年)~平成8年(1996年)に導入された車両で、既に20年以上経つことから、車両更新の時期を迎えたのです。
そして車両更新するか、別の車両にするか検討した結果、採用されたのは電気バス。
トロリーバスは国内にメーカーが少ないのです。
そのため、製造費が割高なうえ、保守・維持管理も難しくなってきたようです。
それならと、同じように環境にやさしい排気ガスや二酸化炭素を出さない、電気バスが採用されたということです。
黒部ダムはトロリーバスから電気バスへ
電気バスは、トロリーバスの長所を兼ね備え、更にバッテリーの容量の向上、約10分の急速充電、経済性などトロリーバス以上の性能を持ち合わせています。
トロリーバスは廃止になりましたが、その車両デザインは受けついでいます。
さらに進化して乗降しやすい低ステップやゆったりとした座席など、バリアフリーを考えた内装になっています。
まとめ
今回黒部の関電トンネルのトロリーバスが電気バスにバトンタッチしましたが、運行していた約54年間完全無事故だったというのは、嬉しい話ですね。
運行、整備、維持を行ってきた方々の努力のたまものです。
電気バスに変わっても、安心して乗ることができるでしょう。